こんにちは。
前回の記事ではアラスカの農業について調べていきました。
今回は、アラスカで僕が見た農業についてまとめていきます。
以前の記事をまだ読んでいない方はリンクを貼っておくので読んでもらえると話がスッと入って来やすいか思います。
アラスカフェアバンクスで見た農業
読者のみなさんはアラスカのフェアバンクスがどこにあるかご存知でしょうか?
地図を見てもらえるとアラスカの中部にあることが分かります。
行く前はずっと寒いものだとばかり思っていました!
8月中旬の気温は日中で15℃~21℃(60℉~70℉)程度あり、朝6時前には明るくなり、夜は11時近くまで明るい時間が続いていました。
風も心地がよくて、とてもすごしやすいです。
そんなアラスカでは農業はそれほど盛んではありません。
しかし今回UAF(University of Alaska Fairbanks)への訪問、学生や職員の方との交流を通して大学内で行われている農業の研究や、研究の中での発見、そしてアラスカを代表する農作物が分かりました。
そこで今回の記事では特にアラスカで育てられている農作物の種類や、歴史、ユニークな栽培方法を特集していきます。
アラスカから世界へ。~アラスカ農業を牽引する花の軌跡~
アラスカは緯度が高い分、多くの花の咲く時期が異なっています。
例えば lower48 では、シャクヤク(芍薬)の花が5月から6月上旬に咲くのに対して、アラスカでは6月下旬から9月にかけて咲きます。
※lower48とは、アラスカとハワイを除いたアメリカ本土に位置する州を意味しています。
この開花時期のずれを利用して、シャクヤクはアラスカから世界の生け花需要に向けて輸出されています。
The Georgeson Botanical Garden(研究施設)では1998年からシャクヤクの研究を始めました。その頃、国内だけでなく世界的に需要が高まっていた影響から、アラスカでも生け花産業の可能性を探る動きがあったためです。その結果、アラスカから世界へ向けた初めての農業輸出物が生み出されることになりました。
※僕が施設に立ち寄った際には花が全て収穫されていたため、開花しているイメージ画像を使っています。
施設の方の話では、シャクヤク農家さんがアラスカにはいらっしゃるようです。
シャクヤクだけでなく、他にも様々な花を見ることができました。
アラスカでも夏野菜??
花だけでなく、野菜も試験的に植えられていました。
野菜の種類についてお話していく前に、アラスカの大地についてご説明します。
アラスカには、永久凍土層(permafrost)という地盤があります。
地層の中に2年以上凍ったままのミネラル/有機土壌/岩盤などがある状態のことです。
聞きなれない言葉だと思いますが、常に0℃(32℉)を下回っている地層を指していますが、場所によっては毎年夏に少しずつ溶けている場所もあります。
それを活動層(active layer)と呼びますが、その結果として地盤沈下と似たような事例が発生します。
そのため、アラスカの工事ではできる限り活動層の影響に左右されにくいよう工夫をしているのですが、今回の記事では説明は控えます。
それだけ地盤が冷たいということは、基本的に野菜を育てる土の中の温度も低いことを意味しています。10cm程度下の温度は10℃(50℉)程度とのことです。
それなのに、露地で育てられていた野菜の種類としてはキャベツ、ケールなどの葉物野菜だけでなくきゅうり(地這い)、トマト、ズッキーニ、スナップエンドウ、赤花豆、ピーマン、アスパラガス、ホオズキなどのある程度の温度がある場所で栽培するような作物も見ることができました。
また、野菜を育てられる時期はとても短いことから(霜がおりるとだいたい作物に悪影響です。)ゆっくり育てることもできません。
どのような工夫をしているのでしょうか。
アラスカ野菜作りの工夫
土壌が冷えているため、土壌を温める必要があります。
その温める工夫として以下の方法が紹介されていました。
- 畝立て
- 東から西に向かうように畝を立てる
- 発砲スチロールや、ヒートテープを畝の下に埋めておく
- グリーンハウス内での栽培
- マルチやトンネルを使った栽培
以上のような工夫がされていました。
ハウスもあったのですが、中に入ることができなかったので学内の方からの話しか聞けませんでしたが、中ではトロピカルフルーツも育てられていると言っていました。
ハウス内には研究者しか入れないそうで、ツアーなども行っていません。
「なぜ野菜の栽培を研究しているのでしょうか。」
そもそもアラスカは農業よりも狩猟メインの食文化です。
今回僕が旅する中で、お肉の処理業者や、狩猟道具屋、実際にハンティングをして生活している人とお会いしただけでなく、観光としても狩猟が大きな役割を持っていることが分かりました。
農機具屋さんもあるのでしょうが、特に見かけることさえありませんでした。
また、自然にブルーベリーなどのフルーツも成っており、山菜つみの感覚で取っているような人もいます。
記事の最後にこの疑問について考察をしてみることとします。
アラスカでなぜ農業を研究するのか。
僕なりの仮説をお話しする中で、以前の記事の内容がとても関わってくるので再度リンクを載せておきます。
元来の狩猟や漁業、山菜積みを行っていた生活スタイルから人口の増加や、食文化の変化によって生活が変わってきたことを以前の記事でお伝えしています。
今回の訪問でさらに深まった内容としては、
- 様々な国からの移民が来たことによる人口増加
→食の多様化。 - 生鮮野菜の輸送技術の発達
→輸入に依存する社会構造へ。 - 栽培技術の発達
→アラスカ大地での効果的な野菜の栽培方法の確立。
食の多様化
現地で分かったことはアメリカ本土からだけでなく、アジア圏などからの多くの移民の方がいたことです。
日本との歴史もとても深く、ミュージアムでは日本人の歴史が展示してあるほどでした。
特に以前は日本からアラスカを経由して飛行機が飛ぶことがよくあったらしく、関係が密接だったことを知りました。
レストランも日本、タイ、中華など他国料理のものがあり、食文化も本土同様に多様化しています。
輸入に依存する社会構造へ。
生鮮食品の輸入が簡易になったことや食生活の変化によって輸入に依存してしまっていた背景があり、輸入に頼らずに州内で生産できるよう考えが移行したのではないでしょうか。
アラスカ大地での効果的な野菜の栽培方法の確立。
今回の記事でご紹介したように、アラスカの土地や気候を研究した上での栽培方法があることから、様々な野菜の栽培が可能になった背景があると思います。
また、その栽培方法が広く認知された結果として、アラスカの農家数が倍増するようなことになっているのではないでしょうか。
まとめ
今回はアラスカで実際に見て、聞いた話や、野菜の生産状況や、栽培方法などについて触れていきました。
最後には個人的な考察も交えてアラスカの農業に関して述べていきました。
この記事ではとにかく「学んだことを新鮮なうちに記事にしておきたい!」という気持ちから執筆しています。
いつもに比べて文献などの情報がなく、あくまで僕の個人的な観点が大きく反映されています。
日本と比べると状況が違うことが多く、読者のみなさんからしてもとても新鮮な内容だったのではないでしょうか。
「私はこう思います!」などポジティブなご意見ありましたらぜひ教えてください。
続けていくつか記事をポストしていきますのでお楽しみください。
今回もアグリステップをお読み頂きありがとうございました!
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