こんにちは!
いつもAgri Step(アグリステップ)をお読み頂きありがとうございます。
前回に引き続きアラスカ農業に関して特集していきます。
アラスカ農業旅Ep.1ではアラスカの花や野菜に関して記事にしていますのでご興味のある方はぜひ読んでみてください。
今回の記事では「動物」に焦点を当ててお話していきますね。
アラスカに行って一番僕が衝撃を受けたのは”Muskox”(日本名:ジャコウウシ)です。
日本語で調べるとジャコウウシはウシ科と出てきますが、英語だと羊やヤギと同じような種になることが書いてあります。
ちなみに研究者も”Goat animal”(ヤギの仲間)と呼んでたのでそちらが正しいはずです。
おそらく聞き馴染のある方は少ないのではないでしょうか。
かく言う僕も、アラスカに行くまで全く知りませんでした。
なぜなら、本当に寒い地域にしか生息していないため、日本やアジア圏ではそもそも見かけることもないからです。
実は氷河期すらも乗り越えたものすごい子なんです!
今回の僕のアラスカ旅ではマスコックスの研究施設、そして保護施設の2軒を訪問しました。
アラスカでは3軒のみマスコックスを育てている施設があるので、結果として2/3に行ってお話を伺うことができたことになります。
1軒目はUAF(University of Alaska Fairbanks)にある研究施設のツアーに参加しました。
ちなみに研究施設と言うものの、一軒の農場と繋がっており、その農場で育てられている動物を研究している施設です。
マスコックスだけでなく、Reindeer(レインディア)の生態も研究されています。
GoogleでReindeerと検索すると日本語では「トナカイ」と出てきます。そして英語でもカリブーと同じというように説明されています。
しかし、実際の研究者から聞いた話ではカリブーに近いけれども厳密には違う特徴を持っているとのことでした。
レインディアに関してもとてもおもしろい話ばかりなので次の記事で特集します!
お楽しみに!
2軒目はアンカレッジの近くにあります動物保護センターです。
ここでは多くの動物が保護されていて、マスコックスだけでなく、ブラウンベア、グリズリー、ブラックベア、ヘラジカ、トナカイ、バッファロー、鹿などの大型動物だけでなく、ワシや狼、きつね、ふくろうなどの小型の動物もいました。
そんな施設にて学んだことをお伝えしていきます。
どうやって氷河期を乗り越えたの?~マスコックスの特徴~
マスコックスの毛にその秘密があります。
マスコックスの毛皮には2種類あり、外側はガードヘアーと呼ばれる触った感じではギシギシしたような毛。
内側はQiviutと言うとても軽く非常に保温に優れた毛に覆われています。
Qiviutは世界一温かい繊維として知られており、毎年大人のマスコックスからは5~7lbs(2.2kg~3.2kg)程度のQiviutが取れます。
※写真内の手籠に入っているのもがQiviutです。
それぞれの特徴について図にしてご説明していきます。
ガードヘアー | 虫や外敵から身を守る。 (主に蚊が病気を持ってくるらしい。) 雪の上でも寝ることができる。 |
Qiviut | とても柔らかく、軽い。 かゆくならない。 世界一温かい繊維として知られている。 Qiviutで作られた製品は高額で取引される。 |
この2種類の毛皮によって寒さに対応できていたんですね。
また、鼻甲介(Nasal turbinate)にも特徴があります。
要するに「鼻」です。
冷たい空気が体内に温かくなった状態で入ってくるような鼻の作りになっているそうです。
次に食生活。
生まれてすぐはミルクを飲みますが、その後は母親から食べられるコケや草などについて学んで、食べ始めます。
氷河期の頃は、分厚い角で雪をどかしてからそれらを食べていたのではないかと言われています。
さらにマスコックスはエネルギーの消費がゆっくりなので、動きが少ない分食事の頻度もそれに比例して多くはありません。
そんな特徴があったからこそ、氷河期を乗り越えられたのでしょう。
それでは次にマスコックスの生態についてみていきます。
マスコックスの生態
マスコックスの角はなんとも見慣れない形をしています。
この角は毎年生え変わるものではなく、一生をかけて作られるものなのでとても頑丈にできています。
メスと比べてオスのマスコックスが持つ角の方が大きく、厚さにして6inch(15.24cm)ほどになるそうです。
オスの場合、群れの中でどのマスコックスが強いのか頭突きをして争うためこのような特徴になっています。
一方で、メスはオスに比べて脳が大きく、子供に与えるために脂肪が多いという特徴があります。
天敵となる熊や狼に対抗する手段として群れで行動しており、それぞれに対して違った対応をします。
熊に対しては、自らを大きく見せるために群れ全体で一列になって待ち受けます。
また、狼に対してはサークルを作ることによって狼の群れが攻撃しにくくします。
マスコックスは記憶力も高いとのことで、とても賢い生物なんですね!
マスコックスはどこにいるの?
今回はアラスカの研究施設と、保護施設で見ることができました。
アラスカ内ではもう一軒農家さんが育てているとのことですが、それ以外の生息地域についてお伝えしていきます。
上の写真で分かるように北極圏のあたりに生息しています。
青色はネイティブとして昔から生息しているのに対して、赤色は人の手によって連れてこられ生息し始めた地域になります。
アラスカは赤色になっていますが、そもそもはネイティブとして生息していた地域で、過剰な狩猟によって絶滅してしまったそうです。
今では農場や研究施設だけでなく、野生としても生活しているマスコックスがいます。
最後にQiviutについて書きます。
世界一温かいQiviut
途中で説明していました”Qiviut”について少し詳しく書いていきます。
Qiviutは上でも紹介したように世界一温かく、生態が多いわけではないのでとても希少価値が高いものです。
毎年春になると暑すぎるためマスコックスは自然にQiviutを落としていきます。
なのでそれが地面や茂みにて見つけることができ商品になるようです。
販売されている場所として、お土産屋さんなどにも少し置いてあることもありますが、メインなお店がQiviutという名前でアンカレッジにあります。
とても素敵な外観で屋内もキレイに整っていました。
様々な商品はあるのですが、Qiviutを織って製品を作る方や、Qiviutの量も限られてるのでいつもすべての在庫があるわけではありません。
スカーフやスモークリングだけでなく、セーターやニット帽などの製品もあります。
Qiviutを織ることのできるのはアラスカの原住民の方々で、アラスカの中でも辺境の村で生活しています。
そんな村では、メインビジネスとなる他産業も特にないため、Qiviutの織物が彼らの収入に直結しているそうです。繊維としてだけでなく、技術面でも高価格となる理由があるんですね。
商品によっては100人ほどが織れるものや、5人しか織ることのできないものなどがあり、価格も様々です。
上のURLから僕が行ったショップの情報を見ることができます。
まとめ
今回の記事ではマスコックスの歴史や生態、Qiviutに関してお伝えしていきました。
日本に住んでいるとなかなか出会うことのない繊維ではないでしょうか。
カナダなどマスコックスが生息している地域では、アラスカとはまた違った形でQiviutの製品を販売しています。
僕の記事ではアラスカにおけるQiviut販売について特集したのでもしご興味のある方は色々と調べてみると面白いかと思います。
国も違い、環境も違えば、聞いたことのない動物やそれから生み出される商品があります。
もっと様々な国や地域を見て、おもしろい農業の在り方を探求していきたいと思います。
それでは今回もアグリステップをお読み頂きありがとうございました!
また次回もお楽しみに!!
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